マイクロプラスチックの規制動向と国際認証制度について
【はじめに】
現在、世界各国においてマイクロプラスチックによる環境汚染、特に海洋における環境生態系への影響が非常に大きな懸念となっており、規制の動きもみられる。
ここでは、マイクロプラスチック問題と規制動向の概要、さらに環境中での生分解性に関する国際認証制度について解説する。
【マイクロプラスチックとその懸念点】
マイクロプラスチックは、一般には環境中に存在する5mm以下の微細な粒子として定義されている。
環境中には、ストックホルム条約で定義されるPOPs(残留性有機汚染物質)が微量濃度ながら存在することが知られている。DDTやPCBsに代表されるこれらのPOPs物質類は、毒性・環境中での残留性・生物蓄積性・地球環境での長距離移動性から国際的に製造や使用が規制されている。マイクロプラスチック自体は高分子化合物であり、ほとんどの国で規制を受けていないが、そのサイズと形状による物理的影響、並びにマイクロプラスチックに付着したPOPs類の媒介として近年、その懸念が高まっている。
【マイクロプラスチックの発生源】
現在も研究中であるが、以下の発生源が想定される。なお、2016年の世界経済フォーラムでは、2050年までに海洋中のプラスチックごみは、重量ベースで魚の量を超えるとの予測を発表している。
・一次マイクロプラスチック(マイクロビーズ):その直接、間接的な使用目的から、製造の段階より微小なサイズを有し、工業用途および消費者製品経由で環境中に放出されると考えられる。
・二次マイクロプラスチック:意図的/非意図的に廃棄、放出された比較的大きなプラスチックが波や太陽光による紫外線等の影響で徐々に崩壊した結果で生成するマイクロプラスチック
・合成繊維由来:洗濯等により合成繊維等の布から剥離、離脱したマイクロプラスチック
表:海洋に流出した世界のプラスチックごみ発生量(2010年推計値)
1位 | 中国 | 353万トン/年 |
2位 | インドネシア | 129万トン/年 |
3位 | フィリピン | 75万トン/年 |
20位 | アメリカ | 11万トン/年 |
30位 | 日本 | 6万トン/年 |
【国際的な規制動向】
・G7環境相会合:2016年に富山市で開催されたG7環境相会合では、”プラスチックごみ及びマイクロプラスチックが海洋生態系にとって脅威かつ世界的な課題である”との共同認識が示された。この声明を受けて、世界で規制の動向が進んでいる。
・国連環境総会(UNEA3:2017年12月):”海洋プラスチックごみ、およびマイクロプラスチックに対処するための障害およびオプションを更に精査するための専門家会合の開催を決定。
・EU:欧州連合(EU)では、2018年1月にマイクロプラスチックの欧州連合レベルでの規制の方針を公表しており、現在規制の内容(案)を策定中である。
・US-EPA:米国環境省では、2017年12月に専門家によるマイクロプラスチックの会合を開催し、化学的知見の蓄積のため、その発生源、環境分布、影響等に関する研究を推進することを提唱している。
・日本:
1.海洋漂着物処理推進法の改正(2018年6月成立)
2.第4次循環型社会形成推進基本計画(2018年6月閣議決定)
2019年は日本でG20サミットが開催される。ここでもマイクロプラスチック問題が議論される予定であり、国内外でさらに規制の動きが加速すると予想される。
【日本における生分解性プラスチックの認証制度】
日本においては、日本バイオプラスチック協会がグリーンプラとバイオマスプラの二つの識別表示制度を制定している。
・グリーンプラの規格:グリーンプラは、実験で確認された生分解性を有するプラスチック(生分解性プラスチック)および天然由来の有機材料が50%以上含まれ、かつ一定の安全基準を満たしたプラスチックで、日本バイオプラスチック協会が認証する。
・バイオマスプラの規格:バイオマスプラは、バイオマス由来の成分が25%以上含まれ、かつ一定の安全基準を満たしたプラスチックで、日本バイオプラスチック協会が認証する。
図 日本バイオプラスチック協会によるグリーンプラとバイオマスプラ
【海外における生分解性プラスチックの認証制度と日本企業の対応】
海外においては、国や地域により生分解性プラスチックの定義や基準が異なるが、国際的に最も活用されている認証制度は、ベルギーに本部を置くVincotte社による認証制度であろう。この認証は、コンポスト中(工業用および一般家庭用)、土壌中、水中、海水中等での分解性をASTM、ISO、OECD等による分解度試験法で試験を行い、一定の基準をクリアしたものがそれぞれ認証される。
【ターゲットの環境コンパートメントと分解性】
上記の通り、Vincotte社による認証制度では環境コンパートメント毎に複数の試験で実施されますが、温度やバクテリアの種類と数によるプラスチックの生分解性は以下の通り異なります。
表 環境コンパートメントによる生分解のしやすさの比較
生分解のしやすさ | 環境コンパートメント | 温度、植種源 |
◎ | Industrial Composting: 都市型ごみ処理場 |
58℃、菌類、バクテリア類、放線菌等 |
〇 | Home Composting: 家庭用ごみ処理 |
28℃、菌類、バクテリア類、放線菌等 |
〇 | Soil: 土壌中 | 25℃、菌類、バクテリア類、放線菌等 |
△ | Fresh water:淡水中 | 25℃、添加したバクテリアのみ |
× | Marine water:海水中 | 25℃、添加したバクテリアのみ、かつ菌数少 |
×× | Landfill:地表面 | 25℃、バクテリアの添加無し、かつ菌数少、接触頻度少 |
【(株)カネカの取り組み】
日本国内では、(株)カネカが2017年に同社の製品であるPHBH(植物油を微生物が体内でポリマーとして蓄えた植物由来のプラスチック)について、上記のOK Biodegradable MARINEの認証を取得しました。この結果、カネカはPHBHの製造能力を従来の1,000トン/年から2019年に約5倍に増強することを公表しており、急速なビジネスの拡大が期待されています。
図 OK Biodegradable MARINEの認証表示
【RFケミカルサービスでは、生分解性プラスチックの認証取得をサポートいたします。お気軽にお問い合わせください。】
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2019年06月07日 10:00